ヒヴァ/昼と夜,そして空

 ヒヴァの街の空気に,すっかり飲み込まれてしまった。街の雰囲気といい,街歩きの面白さといい,ここはインド・ラジャスタンのジャイサルメールと良く似ている。日中の40℃を越える暑さまで一緒なのには閉口するけれど,その暑さにも関わらず毎日街を歩き回っている。

 この街で一番好きな建築物は,何といってもカルタ・ミナールだ。前回も書いたとおり,当時のハーンの戦死によって工事が途中で終わってしまったためにずんぐりとした形になってしまっていて,それがどこか愛嬌を感じさせるのだけれど,同時にこれが完成していればどれほど立派で威厳のあるミナレットになっていたかと想像するのも楽しい。
 近くから見ると,さすがに堂々とした大きさを実感する。
e0105808_1425982.jpg

 ウズベキスタンの各観光地では夜になると歴史的な建物がライトアップされるのだけれど,中国と違って控え目で安っぽさがないので,僕は夜になって街を歩き回るのも好きだ。特にヒヴァの場合は街自体がサマルカンドのように明るくないので,ライトアップされた建築物が本当に闇の中に浮かび上がるようで美しい。
 カルタ・ミナールは夜もやはり堂々としている。夜の暗さの分だけ,未完成に終わった残りの部分へのイマジネーションがかき立てられ,ヒヴァの街にそそり立つ巨大なミナレットが見えるかのような気になってくる。
e0105808_14254663.jpg


 夜の街を気の趣くままに歩いていると,ふと細い路地の間から遠くにミナレットが見えてきたりする。
e0105808_14261786.jpg


 ヒヴァにはカルタ・ミナールを含めて3つの大きなミナレットがある。そのうちで最も高いミナレットに行ってみた。マドラサとミナレットが,それぞれに引き立てあっている。
e0105808_1427339.jpg


 どういうわけかウズベキスタンにはフランス人観光客がやたら多い。80%がフランス人,10%が日本人,10%がその他,というくらいだ。おかげで昼間はフランス人たちが街中いたるところにいるのだけれど,彼らは夜になるとどういうわけか全く外に出なくなる。おかげで,夜の街並を静かにゆっくりと堪能することができた。
 宿に戻る途中,宿近くの城壁に行ってみると星がきれいだった。星の輝く夜空の下のヒヴァの風景は,昔からずっと変わっていないに違いない。
e0105808_14274563.jpg


 朝起きて朝食を摂り,街を歩き始める。まだ午前9時だというのに,もう日差しがチクチクと刺さってくるようだ。そんな中でも,日陰になった石畳の小道は爽やかで涼しい。
e0105808_14282398.jpg

 ヒヴァの旧市街のメイン通りは観光客や観光客目当ての土産物屋が多く,賑やかだ。でも,そこから一筋となりの通りに行くと,急に静かになる。そこで道端の日陰に腰を下ろし,地元の人々が行き交うのを見るのが僕は好きだ。
 高く昇った太陽から降り注ぐ強烈な光と,その太陽にずっと照らされ続けてきた古い干しレンガの壁。その壁の前を通り過ぎていく,鮮やかな原色の服を着たウズベク人女性たち。そしてその背景にあるのは,常に空だ。
e0105808_14285716.jpg

 ヒヴァの空! これほど美しい空はめったにないだろう。限りなく鮮やかで,どこまでも深く,その先の広漠たる宇宙の深みすら想起させる。常に青く抜け切っていて,一点の染みもない。毎日まいにち,どこにも雲がない。高所から眺め渡すと,360°ぐるっとどこも,地平線のすぐ際まで青い空がつながっている。
 ヒヴァに何日も滞在していると,この完璧な青い空こそが,実はヒヴァの主役のような気がしてくる。カルタ・ミナールも,数多いマドラサも,干しレンガの壁も,全てがヒヴァの空にしっかりと抱かれて,だからこそその魅力を安心して解き放っているかのようだ。


 日没間際,夕日に染まったヒヴァの街を高台から眺めた。空も街も,限りなく美しかった。
e0105808_14293226.jpg

[PR]
by Asirope2 | 2007-09-14 14:31 | ウズベキスタン
<< 旅の終わり ホラズムのオアシス >>