キルギス周遊(1)~ 出発,また出発

 去年キルギスに来たときは完全にサクラゲストハウスに沈没していたので,今年はしっかり出歩こうと思っていた。ところが,最初すぐにソン・コルに行った後は,結局サクラに居座ってしまった。気がつくと2週間まったく何もしていない。いったい僕は何をやってるんだ。これではいけないと天候が安定するのを見計らって重い腰を上げ,キルギス周遊の小旅行に出発した。
 ちなみに今回の周遊旅行,序盤は同行者がいる。サクラに泊まっていた日本人旅行者のユリさんという,ヨーロッパ在住,才色兼備のスーパーレディーだ。ユリさんとは途中までの道程が同じで,無理矢理(?)誘って途中まで一緒に行くことになった。

 出発当日は天気も上々,サクラで仲良くなったみんなとの記念撮影の後,門で見送られながら宿を後にした。キルギスを一周して戻ってくる頃には彼らはみんな別の場所へ移動しているはずで,ここで再び出会うことはもうないだろう。
 宿からはバスターミナルへ移動して乗合いのミニバンに乗った。目指すはキルギス中西部の山間にあるトクトグルという小さな街だ。ミニバンは快調にビシュケクを出発してトクトグルに向かった,と思いきや,ビシュケク市内のとあるバザールでしばし停車。満員の車内に更に客を積み増して,ようやくビシュケク市内を出た。

 途中何度か休憩を挟んで,ミニバンはとある集落を通り抜けた。進行方向には高い山々が連なり,その頂は雪に覆われている。天気がいいので青空に雪山がよく映える。この日のルートの目玉であるチョル・アシュー峠越えは標高3200メートルの地点を通る。あの山々のどこかにその峠があるのだろうと思っているうちに,車は減速し,そのまま道路脇に停止してしまった。集落の出口で警察の検問があり,他の車とともに我らがミニバンも停車させられたのだった。

 初めは検問なんてすぐに通過できるものと思っていたけれど,しばらくするうちにドライバーがパトカーの中へ連れ込まれてしまった。免許証がなかったのか,はたまた営業許可証を取っていなかったのか,詳しい事情はわからなかったけれど,とにかく何か問題があったのは確かなようだった。
 他の車は普通に免許証を見せて通過していくのに,僕らのドライバーは30分以上経っても戻ってこなかった。やっと戻ってきて車のエンジンをかけたと思ったら,なんと彼はもと来た道へ車を返し始めたのだった。どうやら,この先へ進むことは許可されなかったようで,他の客も全員どうすることもできないまま,ミニバンはビシュケクへ戻り始めた。
 交通量の少ない小さな集落だったので別の車を拾うこともできず,やむなくビシュケクへ戻る以外に選択肢はなかった。
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 他の宿泊客と記念撮影をし,握手を交わし,門の外まで見送られて出発したサクラゲストハウスに,その日のうちに戻ったときの気分をなんと言い表せばいいだろうか。ちょっと照れくさくて,でもみんなの驚く顔も楽しみな,そんな気持ちで再びサクラの門をくぐり,もう会うことのないはずの仲間たちにあっけなく再会。案の定,みんな呆気に取られた顔でこっちを見ているのが可笑しかったけれど,さすがにぐったりと疲れも感じた。サクラのオーナーからは,そんな事情で戻ってくるのは前代未聞ですよと言われてしまった。


 一夜明けて翌日,今度こそ戻ってくるなよというみんなの声を背に,再びバスターミナルへ向かった。この日は後の行程を考えて,前日の目的地の少し先の街まで行くことにした。乗合いタクシーと面倒な値段交渉を終え(ただし積極的な性格のユリさんが交渉してくれたので,交渉下手の僕は見てただけ),いよいよ出発。この日は寄り道もなくビシュケクをすぐに出た。

 前日の検問エリアには,この日は警官はいなかった。難なくそこを通過し,いよいよ車は山の方へ突っ込んでいく。次第に高度を上げながら曲がりくねった道を進むにつれて,周囲の景色もダイナミックに変化していった。
 最初のうちは山があり,川があり,草地にところどころ林があったのが,標高が上がるにつれて木がまばらになっていく。草地に咲いている花の種類も変わっていくので色彩が変化する。山自体も形や日の当たり具合で印象が変わるので,見ていて飽きることがない。どんどんと走り続けるうちに,遂に最高地点であるテョル・アシュー峠に到達した。ここの標高は3200メートル。峠本来の最高地点は3500メートルを越えるけれど,全長2kmほどのトンネルが掘られていて,実際に通る道の最高高度は低くなっているのだ。
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 トンネルを通り抜けると,一気に目の前に広大な景色が広がって思わず声を上げてしまった。視界一杯に広がる平原の向こうに,遠く小さく雪をかぶった高山が連なる。ソン・コル一帯の景色から湖をなくして草原だけにし,広さを百倍にも千倍にも拡大したような景色だった。何よりも天気がよく,鮮やかな空の青と草原の緑の間に,白い雪山が並ぶ色彩のコントラストが素晴らしかった。

 車はその草原の中をひた走る。ところどころにユルタが組まれ,馬や牛,羊が放牧されている。余りにも美しい景色が延々と,自然の風景が好きな僕でも飽きてしまうくらいに,どこまでもいつまでも続く。色の組み合わせは青と白と緑と茶色,単純なのに鮮烈。
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 夕日が地平線に近付く頃,車はトクトグルの街を通過した。そしてその先に,人造の貯水池であるトクトグル湖が見えてきた。この日は風がなく湖面は鏡のように穏やかだったので,夕日に照らされた山々が湖面に映り込んで美しい。ところどころで車を停めてもらい,景色を堪能した。
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 トクトグルを過ぎるとちょうど日も沈み,空が暗くなりかけた頃に目的地のカラコルという街に到着した。
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by Asirope2 | 2007-08-05 17:26 | キルギス
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