青海湖

 実を言えば,西寧ではまたユースに泊まった。西安でもう二度とユースには泊まるまいと思った矢先で,ちょっと情けない。どうしてユースを選んだかというと,西寧の街の近くにある青海湖(せいかいこ/チンハイフー)に行きたかったからだ。西寧から近いとは言っても,青海湖は高山地帯にあるので交通の便が非常に悪い。青海湖へは旅行会社のツアーを利用するのが一般的という話を聞いていたので,ユースならツアーも取り扱っているだろうと,またユースに泊まったのだった。

 この予想は当たった。ユースで聞いてみると,確かにグループツアーがあるよと教えてくれた。でも結局このツアーには参加しなかった。ユースに着いたその晩,同じユースに泊まっていた中国人の学生カップルから,タクシーをチャーターして青海湖へ行くつもりだけれど,一緒に行かないかとお誘いを受けたからだ。渡りに船と,同じ大部屋に泊まっていた別の日本人旅行者のHさんという人も一緒に,4人で青海湖へ行くことになった。車の定員ちょうどになったので,学生カップルも安く上がると大喜びだった。
 僕はもともとは一日ツアーに参加しようと思っていたけれど,学生カップルの希望で湖畔に一泊することにした。これはもちろん僕にとっても大歓迎の予定変更だ。青海湖は琵琶湖の6倍以上,とにかく大きい。一日ツアーだと少し慌しいのだ。

 青海湖は中国最大の塩水湖で,西寧から西に約200kmのところにある。湖面の標高はおよそ3200mで,かなりの高地だ。高山病が少し気になったけれど,去年キルギスでいきなり3000mのところまで行って全く問題なかったし,今回は既に標高2200mの西寧に二泊している。この高度ならまず大丈夫だろう。


 当日は朝8時にタクシーに乗り込み,いざ出発した。この日は残念なことに天候が悪かった。空一面厚い雲に覆われている。それでもしばらく走るうちに,菜の花畑が広がっている場所に出た。ちょうど花が咲く季節で,一面に黄色い絨毯を敷き詰めたようになっていた。曇り空の下でもこれはきれいだった。
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 途中の街で小さなチベット寺院を訪れたりしながら進むうちに,だんだん周囲の景色が変わってきた。木が少なくなってきて,牛や羊の群れを見かけるようになってきた。標高が上がってきたのだ。運良く雲も薄くなってきて,時おり日が差すこともあった。
 ときに牛の群れが道いっぱいに広がって歩いていたりもする。
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 ここまで来ると空気も“下界”より澄んでくるようで,遠くの山も見通せてなかなかの景色だった。あれが祁連山脈だよとタクシードライバーが教えてくれたのを,英語の達者な中国人学生が通訳してくれた。
 祁連山脈といえば,シルクロードでは必ず名前の出てくる山だ。それが実際に見えていると思うと嬉しくて仕方がない。あの山の向こう側に,シルクロードが通っているのだ。これで天気がよければ最高だったのに…
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 途中の街で昼ごはんを食べた後またしばらく走って,いよいよ青海湖に到着した。着いたのは青海湖の西端,西寧から一番遠い場所に当たる。ここには鳥島という島があり,その名の通り無数の野鳥がやってくる。その営巣地は自然公園になっていて,観光客はその中の一部にだけ入ることができる。気になっていた高山病も全く問題なく,意気揚々とチケット売り場へ。

 中に入ると,電動自動車が待っていた。観光客はこれに乗り,見所を移動する。最初の場所の名前は「蛋島」といった。日本語だと“たまご島”という意味だ。ここでは野鳥が群れをつくって産卵していた。卵はあちこちにゴロゴロと無造作に転がっていて,温められている様子はなかった。もう雛が生まれた後なのか,もともとこういう鳥なのか,僕にはよく分からない。
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 この辺りは野鳥が集まってくるポイントということで,景色を眺めていると,実際に鳥の群れがV字の列を作って飛んでいるのも見ることができた。
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 この次のポイントは何というところか忘れてしまった。とにかく鳥がたくさんいた。
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 青海湖は天候がいいときには,太陽の位置や湖の深度によって無限に色調を変えるという話だった。でも残念ながらこの日は結局ずっと雲が多く,湖はその本当の美しさを見せてはくれなかった。
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 この日はこれで観光を終え,近くの街に泊まった。小さな街で,高地ゆえに木のない一面の草原の中に突然現れたようなところだった。よくこんな場所に街ができたものだと感心したけれど,電気も通っていて,宿や食堂が一通りそろっていた。
 宿に入った後,みんなで夕食を食べに行った。中国人学生たちは明るい性格でこの頃には完全に打ち解けていた。タクシードライバーのマシンガントーク(中国語)も絶好調。賑やかで楽しい夕食会となった。

 宿に戻って翌日の予定を確認した後も,彼らの旅の予定を聞いたり,僕の旅の写真を彼らに見せたりと楽しい会話は続いた。
 その晩は,翌朝天候が回復することを祈りつつ早めに寝た。


 次の朝起きてみると,なんと最悪の雨。天気がよければ早朝に日の出を見に行こうと相談していたけれど,これはやむなくキャンセル。街で朝食を食べて9時頃に出発した。

 この日は天気は悪かったけれど,周囲の景色はなかなかのものだった。前日は湖の北側を回って西端の鳥島へ行ったので,この日は南回りのルートを取った。一面に草原が広がり,そのあちこちに牛や羊,馬が放牧されている。僕は灰色一色の湖は見ずに,山の景色ばかり眺めていた。
 天候がよければもっと違った見え方をしただろうけれど,これはこれで充分にきれいだった。途中何度も車を停めてもらい,爽やかな空気を胸一杯に吸い込んだり写真を撮ったりと,楽しい時間だった。
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 昼過ぎに西寧の宿に戻ると,中国人学生の二人はすぐに敦煌へ向けて出発していった。西寧に一泊くらいしていくと思っていたので,彼らの若さ溢れる行動力に驚いた。今後彼らと再会することはもうないだろうと思うけど,これもまた旅。いい出会いだった。
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by Asirope2 | 2007-06-20 22:27 | 中国
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