クアラルンプール/チャイナタウン

 ペナンの次に訪れたイポーはかなり大きな街で,僕が勝手に想像していたような風情のある街というのとは少し違っていた。こんなことならペナン島にもう少し長く残ればよかったと思うことしきりだったけど,今さら後戻りもできない。これもまた旅。ここは一日滞在しただけで早々に次へ進むことにした。 
 イポーの次に向かったのはマレーシアの首都,クアラルンプール。東南アジア有数の大都市だ。

 イポーからのバスが到着するクアラルンプール(マレーシア人はKLと呼ぶ)のバスターミナルから歩くこと5分,目指すチャイナタウンが見えてきた。ここはKL有数の安宿街でもある。中国風の建物や装飾が入り乱れ,ここだけ突然雰囲気が変わる。ふと視線を上げると遠くに高層ビルが見え,ここがマレーシアであることを再確認する。
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 ここでは今回の旅に出て初めて,ドミトリー(相部屋)に泊まった。ドミトリーでは貴重品などの荷物管理が多少面倒ではあるけれど,安いことのほかに同じ部屋の旅人と様々な情報交換ができるという利点もある。

 さて,この宿のあるチャイナタウン,なかなか活気があっておもしろい。商魂たくましく,食欲旺盛な中国人のイメージをそのまま形にしたような場所だ。

 通りには時計や財布,香水,かばんや衣類などの“ブランド品”を“安く”売っている屋台がズラッと並ぶ。ロレックスの時計なら3000円。もちろんみんな偽物だ。
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 もちろん食べ物屋も多い。通りにベーコンのようなものを焼いて売っている店がたくさん並んでいた。炭火で焼いているので煙がもうもうと立ち昇るのだけれど,その煙は換気扇を使って通りに向けて勢いよく放たれる。
 においで客を釣る中華的巧妙的作戦なのかもしれないけれど,煙を当てられる通行人からすると正直なところちょっと勘弁してほしい。
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 もちろん普通の店も普通にある。食堂や雑貨屋,マンゴーやパパイヤ他たくさんの南国の果物を売る店なども多い。そんな通りを華人だけでなく,マレー系やインド系の人たちも行き交い,多民族国家ならではの風景と独特の雰囲気を作り出している。
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 なぜかサンタクロースの帽子をかぶったおじさんが歩いていた。
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 少し細い通りを入っていくと,生鮮食品を売る市場になっている一画があった。細い路地に肉や野菜を売る店がたくさん並んでいる。
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 ここの市場の鶏肉売り場はなかなか強烈だった。どの店も商品の鶏肉が並ぶ台の下は鳥籠になっていて,生きた鶏が押し込められている。喧騒の中から鶏の鳴き叫ぶ声がするのでそちらを振り向くと,籠から一羽の鶏がつかみ出されるところだった。
 店の親父はその鶏をそのまま秤に乗せ,客にこれでいいかと訊く。客も当たり前の様子でいいよと返す。すると親父はその場で鶏の首に包丁の刃を当てたのだった。

 いわゆる発展途上国と呼ばれる国々を旅していると,人と自然との距離というのを考えずにはいられない。
 ここで見たような家畜から食肉への処理の過程は,いわゆる先進国ではほぼ完全に隠されているので普段僕たちが日本で目にすることはない。
 しかしこうして実際にひとつの命がわれわれ人間の食べ物へと処理されるところを目の当たりにすると,人がいかにたくさんの命を頂いて生きているかということを実感する。そうしなければ人間は生きていけないのだ。人は自然界の膨大な生命に直接・間接に支えられている。
 こういうことを考えると,食べ物を大事にしないといけないということの意味が僕にはよくわかる。

 こういう食肉の処理を表に出すのが野蛮だとか残酷だとかいう考え方は,僕は表層的でしかないと思う。確かに生命を奪うのは残酷なことだ。ただ,繰り返すが人間はそうしないと生きていけない。むしろこういった処理が裏で行われていることを忘れ,平気で食べ物を無駄にするほうがよほど野蛮で傲慢な行為だろう。


 この他に「先進国」で隠されているのは人の死と排泄行為だろう。でもインドに行けば公共の場であるガンジス河の河畔で,亡くなった人々の遺体を焼き,河に流している。
 また,東南アジアやインドなど,世界の多くの地域ではトイレットペーパーを使わずに自分の手と水をつかって直接お尻を洗う。
 こういう社会の中に入ってみると,人と自然との距離がぐっと近くなるような印象を覚える。そしてそういうことを考えていると,人間が自然の一部なのだということに簡単に気が付く。そもそも,人と自然が対立する概念だと考えるのは,地球全体ではかなり少数派なのではないか。


 色々と考え込みながら歩いていると,チャイナタウンのはずれにきた。ここでは突然大きなヒンドゥー教寺院が姿を現した。
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 ここチャイナタウン界隈では,マレーシアの各民族のローカリティが渦巻くとともに,各民族が共存する姿も見えてくる。マレーシアの多民族国家としての一面を象徴する場所のひとつだろう。


 もちろん,クアラルンプールには東南アジア随一の近代都市としての一面もある。この街の象徴であるツインタワーは,昼も夜も誇りに満ちた輝きを放ち続けているのだった。
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by Asirope2 | 2007-02-10 15:07 | マレーシア
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